2013年1月18日金曜日

新幹線お掃除の天使たち

[タイトル]
新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか

[著者]
遠藤 功

[出版社]
あさ出版

[出版年]
2012年8月

[ノートor原著情報]
Noting

[要約&感想]
話題になってるので買ってみた。
まるで赤川次郎の小説のようにすらすらと読める本。

遠藤先生の組織運営の考え方、すなわち、
「組織運営はどうあるべきか」
「硬直した組織を変革するにはどう進めるべきか」
というものを、新幹線の清掃現場の変革事例を用いて
ドキュメンタリーの形態を使いながら説明されている。

問題意識:一体感がない、元気がない、現場と経営陣の距離が遠く会社の思いが現場に伝わっていない。現場は「自分たちは所詮清掃員」。
変革者の思い:「今のままで問題はない」ではなく、「もっと色々なことができるはず」と考え「トータルサービス会社」に持って行きたいと思った。「そういうことができれば現場のスタッフももっと元気になるに違いない」と考えた。

←ここがすごく不思議。どうして「トータルサービス会社」というコンセプトが出てきたのだろうか。普通に考えれば、単なる清掃会社で、「清掃が仕事」というのが当時の常識で、JR東もそれ以上のことは特に期待はしていなかったはず。(実際に文章の中でも「当時の経営幹部はそういうことに興味を示さなかった」と書いている。そういうものだと思う。)「なぜ、それではだめだ!」と思えたのか。バックグラウンドにどういうものがあるのか。どういう思考を経てこういうコンセプトにいたったのか?最初はどこに問題があると思ったのか。それを改善するために、どのような思考の中での試行錯誤をしたのか。それを知りたい・・・。

それからとったアプローチ
<気持ちをつかむ>
●仲間を徐々に増やす
●うまく外部環境を活用して「注目されている」感(←自分たちは間違っていない、自分たちは社会から認められている、自分たちもまんざら捨てたものでもない、と思わせる)を醸成する
●コンセプトを与える。トータルサービス、
●職場の環境をまず改善する。
●組織を組み替える
●イベントで一体感を高める
●価値観を共有し、やる気を出してくれる人をどんどん登用していく。(イベントに参加する人しかり)

<自律を引き出す>
●新しいコンセプトを与える。「さわやか、あんしん、あったか」。
●新しいコンセプトの下に現場と経営陣が一体となって議論できる「場」を作る
 特に、会社の方向性を伝える一方で、スタッフ一人ひとりと真正面から向き合い、現場の声を吸い上げる
 また、議論で出てきた取り組みは積極的に取り組む
●褒めの活用

<自律を風土・文化にする>
この部分は今後の取り組み。

←えてして、ここからが難しい。変革は、変革が動いている最中は現場が生き生きするが、変革が止まると現場の活力も失われる。色々と「やれる」→何らかの満足しきれない部分「こんなこともやってみたい」というような部分があるから動きが出てくる。そういったことを大体やりつくした、イベントやキャンペーンも旬物として定着した、となってしまい、根本から新しい枠組みを作る、というのではなく、枠組みの中でのマイナーチェンジ程度になると、「変革のための動き」自体が「動く」ための「動き」でしかなくなる。何のためにやっているのかが失われてくる。
←人は「不満足」な点を「満足」させるために動く。根本はそこ。「満足」していると思ったら動かなくなる。如何に「不満足」を見つけさせるか。中々見つけづらくなってきた「不満足」「欲求」「ニーズ」を如何に見つけさせるか。
←最初は不満足がたくさんあるから色々とやれるが、成熟するとそれが失われてくる。そうなると、どうすればよいのか・・・。




以下、読んでる最中に思ったこと。
(1)
なんとなく、一人の問題意識の強いリーダーが粘り強く働き掛けてるとともに、外部環境をうまく使いながら、目に見えるような環境改善なんかも行って、組織改革を成し遂げた、という感じがする。
それでも、2年 かかったということなのだが、ある意味、そうしやすい比較的「小回りの利く組織システム、組織規模」だったということか。
そのような「小回りの利きやすさ」という点では、運転システムはやっぱり図体が大きく、他の組織との関わりも「システムレベル」で「密着」してしまっているので、ちょっとやそっとでは動かないのかもしれない。単独の区だけでは動かせないのかもしれない。
そういうような組織を改革するにはどういうことが必要なのか、どの程度の期間がかかるものなのか、そういうのを調べてみるのもいいかもしれない。
あと、なんとなく、job craftの考え方、job craftが可能な職務特性みたいなものを、組織レベルでも考えられるのかも知れない。他との関係性のつよさとか。

(2)
もともとの現場の空気は結構、運転士現場と同じだったようだ。
「プラス方向に引き上げる」と「マイナスを抑える」。「マイナスを抑えることに全力を注ぐべきだ」という考えの人を如何に「プラスもすべきだ」という方向にもっていくにはどうすればよか・・・。

2013年1月9日水曜日

人と機械の共生のデザイン

[タイトル]
人と機械の共生のデザイン -「人間中心の自動化」を探る-

 [著者]
稲垣 敏之

 [出版社]
森北出版株式会社

 [出版年]
2012

 [ノートor原著情報]

 [要約&感想]

参考文献が全然引用箇所が明記されてない・・・
引用であろう箇所の原著がわからん・・・

全体に、航空機と自動車を対象に自動化のあり方について議論している。

稲垣先生が考える「人間中心設計」という言葉の定義が「最終決定権を人間に与えること」であるというのが透けて見える。(P.124)

自動化システムと人との関係を人と人との関係のアナロジーで考ている。

全体としては、

設計指針としてはP.63に示しているものがこの本の主張の核だが、稲垣先生は基本的には「人に決定権を与える自動化」と「機械に決定権を与えつつ、状況はキチンと人に情報伝達する自動化」を状況に合わせて行ったり来たりできる「アダプティブオートーメーション」を推奨しているようだ。


P.63からの引用(一部改変)
人間中心の自動化の基本理念
(1) 人は(航空)システムの安全に対して最終責任を追っている。

(2) 人に指揮権を与えよう

(3) 効果的に指揮を行えるよう、人に主体的に関与させよう
(4) 人が主体的に関与できるよう、人に情報を提供しよう
(5) 適切な理由がある場合のみ、機能を自動化することにしよう
(6) 人が自動化システムをモニターできるようにしておこう
(7) 自動化システムは予測可能なものであるようにしておこう
(8) 自動化システムは人をモニターできるようにしておこう
(9) 人と自動化システムは互いに相手の意図をしることができるようにしておこう
(10) 自動化システムは、簡単に学べて簡単に使えるようにデザインしよう

P.111
自動化レベル
(1) コンピュータの支援なしに、すべてを人間が決定・実行
(2) コンピュータはすべての選択肢を提示し、人間はそのうちの一つを選択して実行
(3) コンピュータは可能な選択肢をすべて人間に提示するとともに、その中の一つを選んで提案。それを実行するか否かは人間が決定。
(4) コンピュータは可能な選択肢の中から一つを選び、それを人間に提案。それを実行するか否かは人間が決定。
(5) コンピュータは一つの案を人間に提示。人間が了承すれば、コンピュータが実行。
(6) コンピュータは一つの案を人間に提示。人間が一定時間以内に実行中止を指令しない限り、コンピュータはその案を実行。
(6.5) コンピュータは一つの案を人間に提示すると同時に、その案を実行
 ← 「提示しなくてもいい!」とも思えるが、「提示」するということで、その後の人の行動が安全なものになる。人の状況認識を損なわなくてすむ。
(7) コンピュータがすべてを行い、何を実行したか人間に報告。
(8) コンピュータがすべてを決定・実行。人間に問われれば、何を実行したかを人間い報告。
(9)コンピュータがすべてを決定・実行。何を実行したかを人間に報告するのは、必要性をコンピュータが認めたときのみ。
(10) コンピュータがすべてを決定し、実行。


なんとなく、よくわからなかった「過信・不信の問題がなぜ『問題』なのか」の本質がわかった気がする。
基本的に、すべての状況変動に適切に対応できる「パーフェクト」な機器は設計できない、という前提の上で、「過信」があった場合には機器が対応できな状況に至った時に、なぜ対応しないのか、何が起こっているのかわからなくなる、というオートメーションサプライズが起きたり、状況への対処が遅れたりする。「不信」の場合は「狼少年」になって、機器が無効化されたり、逆に無視していた機械が勝手に何かをして逆のオートメーションサプライズが起きたりする。
過信・不信によって人の状況認知と機械の状況認知に齟齬が生じてきて、それが不安全をまねくということ。

ちょっと考えればわかるんかもしれんけど、この本を読むまでいまいちよく見えなかった。。。

2012年12月19日水曜日

ヒューマンエラーと機械・システム設計

[タイトル]
ヒューマンエラーと機械・システム設計

[著者]
柚原 直弘、稲垣 敏之、古川 修 編著

[出版社]
講談社サイエンティフィク

 [出版年]
2012年

 [ノートor原著情報]

 [要約]

(前半)
最初にヒューマンエラーの考え方を概説した後、
「人はエラーをおこすもの」という前提にたった機械システムの設計の進め方の解説をする。
特にリスクアセスメントの進め方や、具体的な設計にあたってのエラー防止のための設計を実現するための原則が解説される。
その後、自動化システムとのインタラクションという観点からの設計が示される。

(後半)
自動車、航空、鉄道、原子力、船舶、医療という代表的なマン・マシン・システムを取り上げて、具体的に事例に基づいた機械システム設計が紹介される。


 [感想]
「安全のための設計」を考える段に当たっての教科書という点では非常によくまとまっているように思った。

また、各マンマシンシステムが紹介されていて、それぞれの特徴を対比的に見ることができるので、一度読み通して振り返ってみると、それぞれの違いが分かって面白かった。

この本はあくまで「人はエラーを起こすもの」という前提にたって、「設計」というフェーズで何をすべきかをまとめている。あくまで「設計」というフェーズ。

一方で、こういう考え方で設計しても、すべてのスレットを除去し切るのは難しい。
となると、スレットが紛れているという前提で「運転」「管理」「メンテナンス」という「実務」のフェーズでは、「スレットを見つけて、それに対する構え・備えを立て、エラーを防ぐのも人」と「エラーが起こっても事故につなげないように構え・備えを立てるのも人」という、別の人間観で日々の仕事を組立たりマネジメントすることが必要だろう。

こっちの話はどちらかという工学というよりは、経営学(組織管理、経営管理)の話だろう。

もちろん、これは設計フェーズの話ではないのだが、安全管理全体を眺めたときには、設計だけがすべてではないと思うべき。

2012年11月1日木曜日

運転士裏運転手帳 知らなかった「電車運転士」というオシゴトのすべて

[タイトル]
運転士裏運転手帳 知らなかった「電車運転士」というオシゴトのすべて

 [著者]
奥西 次男

 [出版社]
株式会社山海堂

 [出版年]
1999

 [ノートor原著情報]

 [要約&感想]
JRになる前に定年退職した国鉄運転士の回想録のような内容。
最後まで管理ではなく運転士として過ごした人。

これを読むと結局、昔から鉄道運転士の人らの仕事観ってあんまり変わってないんだなと思う。

仕事の楽しみはやっぱりブレーキングだった、
とか、
他人のチョンボを見つけて安全側にもっていったことで賞をもらう、というのについて「他人のチョンボで褒めてもらうのはよくない」と考えたり。

非常に興味深いのは
「事故防止の意味から、乗務員にはなるべく動揺を与えないように周囲は常に心がける、というのは常識なのになあ。」(P.198)
のフレーズ。
「特権意識」とまわりはとるかもしれないが、運転士は至って真剣に「そうすべきだ」と思ってる・・・。
なんか面白い。

2012年10月22日月曜日

事故が無くならない理由 安全対策の落とし穴

[タイトル]

事故が無くならない理由 安全対策の落とし穴


[著者]
芳賀 繁

 [出版社]
PHP研究所

 [出版年]
2012

 [ノートor原著情報]

[要約&感想]

芳賀先生の本。
新書ということもあり、全体に解説本という感じ。
リスクホメオスタシス理論を前面に引っぱり出しながら、ホメオスタシスが働くのだから、根本的な受容するリスクの大きさを下げないと、外的な安全対策をしても内的なリスク補償行動で無効化してしまう。

根本的な受容するリスクの大きさを上げるにはどうすればいいだろうか??
ということが本の主要テーマだと思う。ただ、根本的には、まだ芳賀先生自身も明確に自分自身の提言というものをまとめきれていない印象。リスクコミュニケーションについても触れたり、運輸安全マネジメント制度にも触れたりと、すんごい発散した感じもある。




最後の方で職業的自尊心との関連についても触れていた。まあ、言ってることはわからなくもない。

ただ、現状では職業的自尊心(あくまでアンケート項目の内容に基づいたもの)が安全行動に結びつくという点について納得行く説明がない。

様々な仲間意識や家族への愛情みたいなものが安全行動(違反行動の抑制)に結びつくというのはわからなくもないが、それをなぜ職業的自尊心というようなものに置き換えてるんだろう?そのままダイレクトに持っていけばいいのに。。。


途中で、鉄道運転士のブレーキングの難しさと楽しさを細かく書いているのは非常に興味深かった。


2012年5月22日火曜日

複雑系入門

[タイトル]
複雑系入門―知のフロンティアへの冒険


[著者]
井庭 崇、福原 義久

[出版社]
NTT出版

[出版年]
1998年3月

[ノートor原著情報]


[要約]
Part I 『複雑系』科学
 Chapter 1 『複雑系』とは何か?
  1.1 疑問形から始まる
  1.2 世界の階層構造
  1.3 固有名詞としての『複雑系』
  1.4 創発
  1.5 『複雑系』理解への道
 Chapter 2 『複雑系』科学の位置
  2.1 個別科学とその階層性
  2.2 『複雑系』科学の位置
  2.3 『複雑系』科学は科学革命を起こしたか?
 Chapter 3 『複雑系』科学の方法論
  3.1 構成的手法によるアプローチ
  3.2 シミュレーション
  3.3 アナロジー
  3.4 『複雑系』を研究しなければ『複雑系』科学ではない
  3.5 「理解の仕方」を理解する
Part II 複雑性の現象
 Chapter 4 フラクタル
  4.1 フラクタルの発見―海岸の長さはどうやって測るのか?
  4.2 自己相似性―フラクタル図形
  4.3 フラクタル次元
  4.4 自然の中のフラクタル
  4.5 自己相似性を用いて自然の風景を再現する
  4.6 『複雑系』科学とフラクタル
 Chapter 5 自己組織的臨界状態
  5.1 砂山の雪崩に隠された規則
  5.2 自然、社会の中にみられるべき乗法則
  5.3 『複雑系』科学と自己組織的臨界状態
 Chapter 6 カオス
  6.1 決定論と非決定論
  6.2 カオスとバタフライ効果
  6.3 カオスの生成
  6.4 動的な振る舞いの把握
  6.5 カオスのアトラクタ
  6.6 カオス生成の原理と特徴
  6.7 『複雑系』科学における「カオス」の位置
 Chapter 7 カオスの縁
  7.1 セル・オートマトン
  7.2 1次元セル・オートマトンとクラス分類
  7.3 λパラメータとカオスの縁
  7.4 λパラメータと複雑さ
  7.5 カオスの縁
Part III 複雑適応系
 Chapter 8 複雑適応系
  8.1 複雑適応系
  8.2 スキーマと適応度地形
  8.3 集合的複雑適応系
  8.4 適応的エージェント
  8.5 複雑適応系と『複雑系』
 Chapter 9 進化と遺伝的アルゴリズム
  9.1 遺伝子という情報
  9.2 ダーウィンの進化論と利己的遺伝子
  9.3 遺伝的アルゴリズム
  9.4 遺伝的アルゴリズムの実行の簡単な例
  9.5 遺伝的アルゴリズムは何をしているのか
 Chapter 10 カウフマンネットワーク
  10.1 自然淘汰と自己組織化
  10.2 自発的な生命の起源
  10.3 遺伝子ネットワークの自発的秩序
  10.4 遺伝子の非線形性と適応度地形
  10.5 カオスの縁への自己組織化
 Chapter 11 ニューラルネットワーク
  11.1 脳とその構造
  11.2 ニューラルネットワークのモデル
  11.3 パーセプトロンによる学習
  11.4 多層パーセプトロン
  11.5 ニューラルネットワークは何をしているのか
  11.6 他モデルと今後
Part IV 『複雑系』科学のフロンティア
 Chapter 12 『複雑系』経済学
  12.1 The Future of Economics
  12.2 新古典派経済学
  12.3 『複雑系』経済学
  12.4 構成要素:主体の内部を見つめ直す
  12.5 要素のつながり:ダイナミックなネットワークとしての経済
  12.6 時間発展と進化:歴史性の重視
  12.7 経済学における構成的研究事例
  12.8 『複雑系』経済学はどこへいくのか
 Chapter 13 人工生命
  13.1 「可能な生命」という観点
  13.2 コンピュータ上の生命
  13.3 ボイド:群れのシミュレーション
  13.4 すり抜けてしまった生命性
  13.5 『複雑系』科学における人工生命研究
  13.6 人工生命研究はどこに向かうのか
 Chapter 14 カオス結合系
  14.1 カオスをつなぐとは?
  14.2 カオス結合モデル
  14.3 カオス的遍歴
  14.4 カオス結合系と脳
 Chapter 15 内部観測
  15.1 観測について考え直す
  15.2 局所的な要素と内部観測
  15.3 観測志向型理論
  15.4 内部観測による時間発展モデル
  15.5 創発とは矛盾を疑似的に解決すること
  15.6 選択領域外部からの選択
  15.7 観測志向理論への道
Part V 『複雑系』研究への道標
  16.1 現在の「複雑系」科学再考
  16.2 理解の新しい方法
  16.3 科学の枠が広がるか、それとも・・・

[感想]
「創発」という言葉に興味をもって読んでみた。
本当に入門編・概論といった感じ。
だけど、入門者の自分としてはいろいろと勉強になった。

・「内部観測」という視点はアクション・リサーチの話にもつながる。
・局所的に決めたルールを積み上げることで、全体としての秩序があるかのように見えてくる。それが創発。
・創発は還元主義ではとらえきれない話。還元主義の下に個別の要素を研究するんだけど、それをいくら積み上げても全体秩序は説明できない。
・まさに個人と集団の関係は複雑系といえる。
・個人的には、シミュレーションであったり、遺伝的アルゴリズムであったり、ニューラルネットワークであったりといった手法を使った研究をしてみたいなぁ・・・。趣味みたいな話だけど。

もうすこし複雑系について調べないといけないかなぁ・・・

2012年5月20日日曜日

構造こわし 組織変革の心理学

[タイトル]
構造こわし 組織変革の心理学

[著者]
古川 久敬

[出版社]
誠信書房

[出版年]
1990

[ノートor原著情報]

[要約]
―目次―
1章
 変化と心理的抵抗
  1節 変化認知のメカニズム
  2節 変化に対する心理的抵抗
  3節 変化とリスクテイキング
  4節 変化への心理的抵抗を生み出すもの
  5節 本書のねらいと構成について
2章
 変化の時代と組織の創造的変革
  1節 変わる環境と組織の変革
  2節 企業組織のライフサイクルを左右する要因
  3節 いま管理者に求められている新しい役割
3章
 マルチループの組織学習による組織の変革
  1節 組織学習について
  2節 三つのタイプの組織学習
  3節 変革型マネジメント
4章
 職場集団の硬直と衰弱
  1節 「集団年齢」―職場集団にも年齢がある
  2節 情報と集団活力
  3節 異なる「集団年齢」を持つ集団の特徴
  4節 集団年齢に応じたリーダー行動
5章
 集団の変動ダイナミズム
  1節 職場集団のもつハードおよびソフトな構造
  2節 ソフト構造とプレッシャー
  3節 創造的な集団変動―ソフト構造の変容
  4節 集団変動を促進する要因
  5節 集団内のコンフリクト
6章
 職場を変革する構造こわし行動
  1節 組織変革の進行プロセス
  2節 職場変革のための構造こわし理論
7章
 構造こわしの実践手順
  1節 構造こわしの準備段階
  2節 構造こわしの導入段階
  3節 構造こわしの実践段階
  4節 継続的な構造こわし行動
  5節 変革にともなう心理的抵抗の予知と克服
8章
 意識変化のメカニズム
  1節 態度変化のメカニズム
  2節 態度変容を促進するためのふたつの方策
  3節 内発的意欲の発生メカニズム


[感想]
まあ、もう古典だよね・・・
本全体で面白いなぁと思ったのは、とにかく「上司」というもののパワーを最大限発揮することによって組織の変革が行われていくということ。
たしかにそうだよね。
トップダウンが一番手っ取り早いかも。ボトムアップとは言いながら、それをオーソライズして展開していくのはトップの役目!

ふと思った。
説得や研修などで、色々と知識を与えたねを植えて、芽吹きまで行ったとしても、普段の職務環境は何も変わらず、職務内容も何も変わらず、なのであれば、その中で行動はなかなか変わらない。もちろん、主体が行動をほんの少し変えてみることで環境も変わっていったりすることもあるが、「普段に戻った時」には「職務環境」「職務内容」「周囲の目」は、戻ってきたメンバに対して「それまでと同じように行動」するように促す(そのことを期待する・予期して回りが動く・状況は変わらないダイナミズムで動く)。
芽吹きがあっても、日々の行動が前と同じなのであれば、やがてその芽吹きは枯れていく。元の木阿弥にもどる。。。
そうならないように、研修や説得を行うっともに、具体的な外界への働きかけ(すでにあるダイナミズムに抵抗して強い意志で本人が行動を変えることも含めて)していかなければならない。
もちろん説得の過程で、本人のダイナミズムの捉え方を変える・認知を変えるということもあり得る。結局、「状況のダイナミズム」は行動主体の心の中にあるもの。認知的なモノ。なので、主体が認知を変えれば「状況のダイナミズム」も「変化」する。



以下、いくつかのフレーズを引用・・・
P.95
集団は時間の経過とともに、それが現在抱えている課題にもっともふさわしい独自の集団構造をもつようになる。当然、それによって効率が高まり、したがって生産性もぐんと向上する。ところが、環境に変動が起こり、遂行すべき課題が質の点でガラリと変わると、かつて効果を上げた集団構造や遂行方法が、皮肉にも大きな「足かせ」となり、むしろ妨害的に働いてしまう可能性をもつ

P.103
(1) 職場の集団年齢が高まると革新指向性は低下する傾向を見せるものの、必ずしも革新指向性の最大の決定因とはなっていないようである。・・・すなわちたとえ職場集団の集団年齢が高まったとしても、意図的な働きかけを行うことによって(職場内の仕事コミュニケーションのあり方を見直すなど)、職場は活性化され得る。
(2) 個人レベルの革新指向性と集団レベルの革新指向性では・・・その源泉が異なっていることがうかがえる。個人レベルのそれは、職務の特性や、仕事の上で関係をもつ他職場との接触が関与しているようであるし、集団レベルのそれは、上下間のコミュニケーションの如何が強く関与しているようである。
(3) 上司個人の革新指向性の強さは、職場成員の個人および集団レベルの革新指向性の高さと直接的には関係がなかった。むしろ、上司―部下の仕事コミュニケーションの質や内容、すなわち「部下とどのようなことを、どのように話しているか」が革新指向性の強さを決めているようである。
(4) 職場のっ規模が革新指向性に及ぼす影響は、職場内のコミュニケーションのあり方によってキャンセルさせれてしまうようである。

PP.111-117・・・組織の成長と老化の過程のモデル。
(特に、、、)
老年期の集団―判断や決定の自動化
・・・問題は、会話やコミュニケーションの内容、中身である。その集団が抱えている課題を、いかに工夫を凝らしながらより効果的に遂行するかとか、新しく行うべき課題や企画を積極的に議論し、検討するとか、あるいは業務改善の方法を皆で案出するなどというような前向きで、課題指向的な内容を持つコミュニケーションはほとんどまったく姿を消している。そしてその代りに、仕事とは関係のない、趣味や遊び、それにレジャーの話などが主体となっている。「昨日、何して遊んだ」「今度、何して楽しむ」などの会話だけがあふれている。もちろんこの種の会話だって、人びとの情緒的な安定をはかり相互の親密さを増すうえで不可欠のものではあるが、ほとんどこれだけに偏ってしまっていることが多い。そして、楽しくはあるが、変化に背を向けた発展や進歩のない、活力を喪失した職場になってしまいやすい