2014年1月14日火曜日

承認とモチベーション

[タイトル]
承認とモチベーション -実証されたその効果-

 [著者]
太田 肇

 [出版社]
同文館出版 

 [出版年]
2011年

 [ノートor原著情報]

 [要約] [感想]
まあ、結局は承認を与えることがモチベーションにつながるよ、ということを細かくアンケートを取って調べましたという話。

主張自体はそれほど目新しくない。Pinkのモチベーション3.0とほぼ同じ。

アンケートを取った対象は中々興味深い。
特に、公共企業A、病院D、Eというもの。
このあたりは今後に使えそうかも。

こういう調査で常々思うのは、
本当は
「潜在能力としては同じなんだけど、方や承認が得られている群であり、もう一方は承認が得られていない群である」
という形で統制した上で、
パフォーマンスなり、モチベーションなりを評価しないといけないと思う。

でないと、「結局は潜在能力があるからこそ承認も得られるし、モチベーション(特にこの本では自己効力感)も高くなっている」し、「潜在能力がそもそも低いからこそ、承認も自己効力感も低い」という反論を受けえる。


2014年1月10日金曜日

主なき安全〜リスクアセスメントの暴走〜

[タイトル]
主なき安全〜リスクアセスメントの暴走〜

 [著者]
濱田 勉

 [出版社]
労働調査会

 [出版年]
2010年5月

 [ノートor原著情報]

 [要約] [感想]
非常にわかりやすく現場での安全管理とリスクアセスメントの進め方について書いてくれている。


特に、リスク・ハザード・デンジャーなどの概念の整理は大学で教えるのにも引用できそう。

要するに、
危険源(ハザード)は物理的に特定できるもの。高い位置にいれば、墜落が生じる。電気をいじるのであれば感電が起こりえる。強いトルクがあれば、巻き込まれが起こりえる。大きな質量が動いていれば、押し潰される。早く動くものがあれば、衝突が起こりえる。など。
危険源の存在を消すのが「本質安全」と呼ばれるものである。
危険源に対して人を接近させないようにするのが「スレットの回避」である。

その危険源の存在に対して、人が接近している時に「危険な状態」となる。
その「危険な状態」にあるからと言って、必ずしも危険事象がおこるとは限らない。
ここで危険事象とは「墜落」「感電」といった想定される危害に直接つながる事象が起こっている状態である。
危険な状態にあるからといって、必ずしも危険事象が起こるとは限らない。
「足を滑らす」「注意がそれる」といった確率的に起こりえることによって危険な状態から危険事象になる。

さらに、危険事象が起こっても、危害に対しての回避策が設けることができることもある。回避策でも回避できなかった場合に危害にいたる。

つまり、
・危険源に対して人が接近する(危険源にさらされる)可能性と、
・危険源にさらされている状態において実際に危険事象につながる事象が起こる可能性、
・危険事象が起こった時に実際の危害の発生の回避に失敗する可能性
の3つの可能性の組み合わせと、
生じた危害による損失の大きさ
とを組み合わせたものがリスクという概念である。



あくまで確率であり、本質安全にできないのであれば、かならずそこには例えわずか出会ったとしても「事故」の可能性は残る。それが残存リスク。
残存リスクについては、突き詰めれば作業者本人がそこにリスクがあることを十分に承知して注意を向けておかないといけない=重点管理が必要ということ。

また、リスクアセスメントを進める上では、作業の手順(マニュアルというより、実際の手順)を時系列で考えていくべきというのも納得。


正直、もっと「破廉恥」なコトがかかれていることを期待したが、思いの外、素直な本だった。さすがに労基署監督官として色々な現場を見ているだけのことはあるという感じ。
ただ、基本的に製造現場・建設現場の話。

ただ、思うんだけど、、、
こういうリスクアセスメントは「いつやるの?」というのがすごく難しい。
あと、一回やったらしまいなの?という話もある。
さらには、現実にはリスクアセスメントに参加したメンバは、その過程で色々なリスクに気づいて安全意識が高まるだろう。
しかし、一回やってしまって、其の時に管理をキチンとしたとして、人が入れ替わったりすると、どうするのか?教育でカバー?さて、そんなことができるのか?
結局のところは、リスクアセスメントはシステム改変にはつながっても、人を主役に見た時には「静的」なシステムにしかならず、「システムに従えばよい」という人の対策しかならない。
もちろん、しないよりはしたほうがよくて、実際にリスクアセスメントによって保安度は高まるとは考えられる。





2014年1月9日木曜日

ノットワーキング 結び合う人間活動の創造へ

[タイトル]
ノットワーキング 結び合う人間活動の創造へ

 [著者]
山住 勝広、ユーリア・エングストローム 編

 [出版社]
新曜社

 [出版年]
2008年

 [ノートor原著情報]

 [要約]

 [感想]
特に後半はなぜこの本に入っているのか分からない。
正直、ダレる本。

ポイントを要約すると、
ノットワークとは、
「それぞれが対象を共有しながらも、独立した活動システムを形成しているなかで結ばれる関係」(p.162)
であり
「そうでなければ関わることのなかった別々の活動の糸が、結ばれ、解け、また結ばれていくという律動によって特徴づけられるもの」(p.162)
である。


つまり、ノットワークするとは、
それぞれ別々の活動の枠組みに入っている複数の主体をまず考える。
それぞれの活動は、そこでの様々な暗黙の前提の下で固定化している。
それが、ある時に互いに出会い、議論をする、協働することによって、
互いの矛盾に気づき、その矛盾を乗り越えるための新しい活動を生み出していく。

ノットワークすることがもたらすものをもう少し書いたのが
「このノットワークをエンゲストロームは、人間活動の発達を促す新たな概念として注目する。すなわち、ノットワークは、ある部分とある部分のつながりによって予測不可能な何か新しいものが創成され、そのつながりに関る主体が自らの生活を変化させ発達する過程を開示するものなのである」(P.187)

野仲郁次郎のSECIモデルの話ににてはいるのか・・・?いや、ちょっと違うか。

いずれにせよ、突き詰めれば「多様性(Diversity)」によって発達が進むというだけの話か・・・。

2013年11月29日金曜日

人的資源マネジメントー「意識化」による組織能力の向上

[タイトル]
人的資源マネジメントー「意識化」による組織能力の向上

 [著者]
古川久敬, 柳澤さおり, 池田 浩

 [出版社]
白桃書房

 [出版年]
2010. 6.

 [ノートor原著情報]
 [要約]
 [感想]
産業組織心理学会で研究発表したあとに三沢さんから
関連書籍として教えてもらった本。

まさに、働きがい研究の中でやってきたようなことが
概ね描かれていて、おお!!っという感じ。

目的、目標の意識化によって役割定義をはっきりさせることが
タスクパフォーマンスを高める。
また、チームにおいては、コンテクスチュアルパフォーマンスを高める。
そして、それを振り返り、課題を整理することが今後につながっていく。

ちょっと気になったのは、
タスクが個人個人で別々なのであれば、チーム目標を設定することで
かえってパフォーマンスが落ちるという結果になっていたということ。
確かにわかるのはわかる。
というのは、タスクがあくまで個人個人なので、そこにチームの概念を注入すると
単純に仕事が増えるという形になるから。
ただ、重要なのは、この調査は主観評価によるもの。
つまり、個人タスクだと思っているのであって、
より上位の視点からはチームタスクということもあるだろう。
運転士や看護師なんかはそうではないか?基本は個人タスク。
たしかにそうなんだけど、学習まで含めればチームタスク。
そこまでの視野に立てている人にとっては、パフォーマンスが落ちるとか
いう回答にはならないのではないか?

重要なことは役割をどう定義するか、ということだろう。

あと、最後にあったBad Apple理論。おもしろい。
だけど、ここでも底上げと押上げという2つしかないのがちょっと?を感じる。
そもそも全体を別の軸に載せるということもあり得る。
底上げ、押上げだと、教育論やリーダーシップ論、モチベーション論になるんだけど、
それだけじゃなくて、マネジメントとしてはレギュレーションそのものを弄る
という視点が必要ではないだろうか?
そうすることで新しい軸上では、今と同じようにばらついているんだけど、
それの写像としての今の軸で見た時には、バラつきの位置はまえの状態と変わっているはず。分布全体の位置が変わっている。
そういうように持っていけないかな・・・
レギュレーションを変えるという視点が必要。
前田さん(INSS)が言っているように、暗黙のレベルに働きかけることが
文化変革になるんじゃないかな。

2013年11月15日金曜日

不確実性のマネジメント

[タイトル] 不確実性のマネジメント
 [著者] カール. E. ワイク キャスリーン. M. サトクリフ
[出版社]ダイヤモンド社
[出版年] 2002年7月
[ノートor原著情報]
Managing the Unexpected: Assuring High Performance in an Age of Complexity 
 Karl E. Weick and Kathleen M Sutcliffe
Jossey-Bass Inc. 2001.7.
 [要約]
 [感想]
マインドフルという言葉がキーワードになってる。
本の趣旨としては、
本質的に不確実性をはらんだ現実の状況において
ノーマルという成功を保ち続けるには、
マインドフルでないといけないということ。
マインドをフルに働かせる。

前提としているのは、「予想をすると、予想外が生じる」ということ。
想定を深めることに必死になって、完全と思しきPlanを作ってしまうと、
実行段階では、Planを実行するだけになってしまって、現実の状況を
モニターするというマインドをフルに働かせることができなくなる。
重要なことは、「予想外のことも起こりえる」ということを想定し、
そういうことが起こっていないかをマインドフルにモニターすること
そういうことに対するセンシティビティを高めておくこと。

この本を読んで、「備え」と「構え」の違いが明確に自分のなかで
整理できた気がする。今までは「備え・構えを築く」とまとめて
語っていたけど、備えは予想して準備しておくこと、構えは予想外のことも
起こるんだと、「心の構え」を築いておくこと。

この2つは明確に分けないといけないよね。

2013年10月29日火曜日

拡張による学習 活動理論からのアプローチ

[タイトル]拡張による学習 活動理論からのアプローチ
 [著者] ユーリア・エングストローム (訳:山住勝広/松下佳代/百合草禎二/保坂裕子/庄井良信/手取義宏/高橋 登)

 [出版社] 新曜社
 [出版年]1999年8月
 [ノートor原著情報]LEARNING BY EXPANDING an activity-theoretical approach to developmental research

 [要約]
 [感想]とにかく難しい・・・。わかったのは、「弁証法的」という言葉の意味がわからなかったということ(苦笑)
まあ、それはさておき、現実の世界は以下のような要素で構成されている。
       道具
       /\
      /  \
主体(人) ーーーー対象−>目標
     /\  /\
    /  \/  \
  ルールーー集団ーーー分業
  規範

そして、それぞれがある意味安定的(ダブルバインド状態で平衡)している。
要するに、安全という点からみれば、
ある安全性のレベルは、それと対立するもの(例えば経済性)と
平衡状態で保たれている。
なので、安全性を今よりも高めようとしても、経済性がもとに戻そうとする。
重要なことは、
そのダブルバインドを解消する別のテーゼを展開すること。
そして、そのためには
スプリングボード
モデル
ミクロコスモス
が必要となる。

弁証法とは・・・
あるテーゼに対して、アンチテーゼが展開されている。
その対立を解消するためにそれらを「統合」できる
別のジンテーゼを展開する。
そういう形で議論を展開していこと。
そして、
弁証法的発展とは、現実の世界である2つの対立するテーゼ(ダブルバインド)
を解消できる別のテーゼで現実のシステムを捉え、その視点でシステムを
発展させることで、2つの対立するテーゼを解消する(あるいは解消させなくとも
ダブルバインドによる身動きが取れない状態を回避しながら、システムを
よりよいものへと改善していく)ように持っていくこと。

2013年8月29日木曜日

社会技術システムの安全分析 FRAMガイドブック

[タイトル]
社会技術システムの安全分析
FRAMガイドブック

 [著者]
エリック・ホルナゲル著
小松原明哲監訳
氏田博土/菅野太郎/狩川大輔/中西美和/松井裕子訳

 [出版社]
海文堂

 [出版年]
2013年5月

 [ノートor原著情報]
 [要約]
 [感想]
FRAMの教科書みたいなもの。
相変わらず翻訳がイマイチで読みにくい・・・。

正直、FRAMの手法そのものは実際にするには壁が高いと思う。
ただ、その概念自体は参考にはなる。

SAFETY−2の説明はなかった。
SAFETY-2の説明がされている文献って、これっていうものがないんかなぁ・・・